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患者のクレーム、患者とのトラブルの対応法のコラムです。患者とのトラブル対応は、歯科医師のための弁護士、サンベル法律事務所にご相談下さい。

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患者のクレーム、トラブルへの対応法

歯科のトラブルの解決に強い弁護士です。

患者とトラブルになり、対応にお悩みの歯科医の方は、サンベル法律事務所にご相談下さい。なお、患者側からのご相談はご遠慮いただいております。


弁護士鈴木が力を入れている歯科医院法務に関するコラムです。
患者のクレーム、歯科トラブルへの対応法をご説明します。


 クレームへの対応法

歯科医院経営で避けて通れないのが、患者からのクレームです。
クレームの内容は、待ち時間の長さなど歯科医院の運営に関するもの、歯科医や受付スタッフの怠慢を指摘するもの、治療内容や治療費の説明不足を糾弾するもの、医療ミスを主張するものなど、様々です。

患者のクレームで相応の理由があるものは、真摯に対応する必要があります。誤解に基づくものや、因縁をつけ絡んでいると判断されるものについては、慎重に、しかしあっさり毅然と対応すべきです。

歯科医から患者トラブルの相談を受けていると、後者のケースについても真摯に時間をかけて対応し、その結果、トラブルが深刻化している例が多いと感じます。
患者の言い分に理がない場合は、その旨説明し、歯科医がそれ以上の譲歩をする必要はありません。にもかかわらず、何度も面談し丁寧に説明し、さらに譲歩もしていくと、逆に、非があるから丁寧に対応し譲歩しているのだと患者の誤解を深め、あるいは御し易いと患者に判断される結果に繋がります。
理のないクレームについては、毅然と対応しましょう。

また、クレームと並行し、患者が行政機関に相談し、加えて弁護士にも相談するケースが少なくありません。そして、歯科医に対し、行政機関や弁護士に相談しているなどと話してくる患者もいます。
しかし、理のないクレームについては、理がないのですから、気にせず毅然と対応することが肝心です。
なお、理のない譲歩はお勧めしませんが、患者との話し合いそれ自体は、患者の納得のため、ある程度までは柔軟に対応すべきかと思料します。

大声を出されたり脅迫的な文言を伴うなどの強度のクレームがあった場合は、抱え込まずに弁護士に相談し、弁護士に窓口になってもらった方が良いでしょう。クレーム対応は、初期対応が重要です。初期対応を誤り紛争化すると、紛争対応によって院長及びスタッフに生じる時間的精神的負担が、歯科医院経営に悪影響を及ぼすことになります。
医療過誤については、医療過誤、医療ミスのコラムに詳しく記載しています。

 応招義務のトラブル

歯科の応招義務の患者トラブルについて、代表的なケースをご説明します。医療機関の従事者にとって、患者の受診を断ることは勇気がいることと拝察しますが、受診を断るべき場合はきちんと断ることが望まれます。

1 治療費を支払わない患者への応招義務

歯科診療を行い、治療費を請求しても、理由をつけて支払わず、にもかかわらず、継続して通院してくる患者が稀にいます。
催促をしても未払い分を支払ってくれない場合、歯科医師としては、患者の治療の継続を拒みたいところです。

患者の受診を拒めるか否かについて、歯科医師法19条1項が「診療に従事する歯科医師は、診察治療の求があった場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。」と定めており、係る応招義務との関係が問題となります。

詳細は拙著『困っていませんか?こんな患者さんとのトラブル&ハプニング』を参照いただければ幸甚ですが、結論としては、歯科医が支払いを繰り返し催促し、にもかかわらず、合理的な理由もなく支払いをしない患者の場合は、特段の事情のない限り、診療を拒否できる正当な理由があるというべきです。

治療費を合理的な理由もなくいっこうに支払わない患者であり、重篤な症状で直ちに治療が必要な状況にもないとすれば、未払い分を支払うまで、歯科医は患者の受診を断って差し支えありません。
もっとも、合理的な理由なく治療費をいっこうに支払わず、にもかかわらず診療を求めてくる患者ですから、受診拒否は、患者トラブルに発展するリスクがあります。しかし、いってみればお店で代金を支払わずに商品を要求する行為であり、これはおかしなことですので、トラブルを恐れず、明確に毅然と受診を断る対応をお勧めします。

2 診療時間外の患者への応招義務

歯科医院の診療時間外、例えばお昼休みや夜などに、診療を求め来院してくる患者が稀にいます。
診療時間外の診療には基本的に応じない方針の歯科医院の場合、入口のドアを閉め診療時間外であることを明示するなどし、患者からの診療時間外のアプローチに対応しないことが、患者トラブルを避けるために最も有効です。

とはいえ、ドアを繰り返しノックされるなどし、応答せざるを得ない場合もあります。その場合は、再度の来院を促すなどすることになりますが、患者が受診を強く求めてきた場合に、診療時間外を理由に診療を拒否できるのか、上記の歯科医師法19条1項の応招義務との関係で問題となります。

結論としては、診療時間外に来院した患者に対しては、特段の事情のない限り、診療を拒否できる正当な理由があるというべきです。

そこで、診療時間外に来院した患者に対しては、診療時間内にあらためて受診するよう促せばよい、ということになります。ただし、患者の状況によっては、診療体制のある他の歯科医院を受診するよう指示するなどすることが求められる場合も考えられます。
診療時間内の再訪を促す際には、その患者との信頼関係を維持ないし構築し、トラブルを予防するため、診療時間外の来訪に腹を立てずに、その患者に懇切丁寧な説明を行うことが重要です。

3 外国人の患者への応招義務

外国人旅行客などで、日本語ができない患者が、診療を求めて来るケースが稀にあります。
日本語ができない患者について、診療を拒否して良いか、上記の歯科医師法19条1項の応招義務との関係で問題となります。

結論としては、外国人に対しても応招義務はありますが、日本語ができないなどの理由により、歯科医との意思疎通が困難である場合は、治療について説明しても理解し納得してもらうことなどができないため、原則として診療を拒否する正当な理由があるというべきです。

そこで、外国人旅行客などで、日本語ができない患者に対しては、歯科医院の受診を断って差し支えない、ということになります。患者の状況によっては、当該言語などに対応できる医療機関を紹介し、受診を促すことが望ましい場合もあるでしょう。そのような場合に備え、歯科医院に言語別紹介先医療機関の一覧を備え置くことも検討して良いと思います。
受診を断る際には、トラブルを避けるため、ジェスチャーなどを利用し、患者の納得の獲得に努力することが重要です。

 保険証を忘れた患者とのトラブル

歯科医院の患者で、保険証を持参せずに受診を求めてくる場合が稀にあります。
初診の患者で、保険証を忘れ、にもかかわらず保険での受診を求められた場合の対応は、歯科医師の考え方によりそれぞれ異なっているという印象です。受診を断り保険証を持参しての再訪を求める歯科医院もあれば、自費診療での受診となることを説明する歯科医院もあり、あるいはサービスで後日の払い戻し手続きに応じる歯科医院もあるようです。

法的には、保険証を持参しない患者は、自費診療で受診させることで問題なく、患者が応じない場合は、保険証を持参しての再訪を提案すれば良いということになります。
以上の対応で納得せず、引き下がらない患者の場合は、トラブルがちな患者の可能性があり、トラブルがちな患者に対しては、サービスで特別対応をすると、味をしめて、過剰な要求を繰り返す傾向があります。トラブルがちな患者に対しては、今後のトラブルを避けるためにも、原則どおりの対応をすべきです。

なお、院長などの歯科医が対応に出ていくと、患者が特別対応を期待し要求を強めることが多く、粘られますので、この種のケースでは、必要に応じ報告は受けつつも、受付スタッフに対応を完遂させることが、トラブルに発展させないために望ましいでしょう。

 患者トラブル対応のポイント

歯科の患者トラブルについて、対応のポイントをご説明します。

1 患者の対応窓口

患者から、患者の配偶者や子供、親、あるいは第三者をやり取りの窓口として欲しいと申し込まれることがあります。
しかし、第三者の介在は、紛争の解決に繋がらないケースが多く、また、本人の正確な意思確認が行われるか、といった問題もあります。
そのため、患者の窓口担当者が弁護士である場合を除き、患者本人を連絡窓口とさせるべきです。

2 患者との面談場所

歯科トラブルの際の面談場所は、歯科医院など、院長が指定した場所で行うべきです。
患者が指定した場所で行うことは、リスクが高く、避けるべきです。患者の自宅などはもちろん、ホテルのロビーやファミリーレストランなど、公共の場所を指定されても、そこで面談が行われるとは限りません。患者指定の場所に出向いて面談することは、長時間拘束されるなどの可能性が排除できず、慎重に考えて下さい。

3 患者との面談方法

歯科トラブルでの患者との面談は、歯科医院側は、歯科助手など同席させ、複数名で対応して下さい。
面談では、患者に対し、時間制限を最初に伝えるべきです。患者に粘られた際に、切り上げやすくなります。
歯科医療過誤などの深刻な患者トラブルの場合は、面談の内容は、録音する旨を患者に告げた上で、ICレコーダーで録音して下さい。患者の脅迫行為や暴力行為などが抑制されます。


患者のクレーム、患者とのトラブルにお悩みの歯科医の方は、迷わずお電話を下さい。歯科トラブルの事実関係、診療録などを確認聴取した上で、取るべき対応や留意点などをアドバイス致します。


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クレーム、トラブルの対応法以外にも、コラムを掲載しています。
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1  歯科医院の居抜きと開業
2  医療法人の法務
3  歯科医院の事業承継とM&A
4  歯科医院の倒産、廃業
5  患者のクレーム、トラブル
6  医療過誤、医療ミス
7  歯科の個別指導と監査
8  医道審議会と行政処分

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